この家に引っ越してきてから5年くらい経つけれど、まさか……だった。
この家の中でGが出るなんて……。
しかもクソでかい。
Gというのは、まさしくゴキブリのことである。
台所に立っていた時、ふと足元を見ると、角っこにクソでかいヤツがいた。
心の中で「ジャーン!」と効果音が鳴っていた。
一瞬、夢かと思った。
ありえない場所に、ありえないヤツがいるというビジョンを見て、頭の中がショートした。
そのくらいの違和感。
しかし、すぐにハッとした。
戦わないと。
絶対に逃がしたりするもんかと。
だって狭いワンルーム。
しかし隠れるところは無数にある。
絶対に、仕留めないと。
覚悟した。
すぐに私はゴキジェットを……取ろうとしたら、それは消火器だった。
ちがう!
ここじゃない!
あっちだ!
洗濯機の上……ああっ、奥の方にある!
……とかなんだとかしてたら、ヤツが動いた!
抜かれるっ……!
ここで抜かれたら、隠れるところ無数のベッド近辺に行かれる!
いわば住宅街!
テロリストが住宅街に逃げ込んだらやっかいなことになる!
なんとしてでも、この台所周辺で抑え込まなければ……!
と、私が手にしたのは中性洗剤。
ベッド方面に走るヤツめがけて、オリャ〜ッと撒いた。
すると何滴かヒットした!
しかしヤツは、被弾したまま、冷蔵庫や本棚がある面の下に隠れこんだ。
それからは、しばし膠着状態。
その間にゴキジェットを取り出し、いつ出てきても確実に仕留められるよう身構える。
しかし、出てこない。
こうなると怖い。
本当は冷蔵庫や本棚の下にはいないのではないか?
すでに、死角をついて裏手からベッド方面に逃げ込んだのでは?
机の周りのゴチャゴチャしたとこに逃げてたりしたら最悪。
ヤツは人間の妄想までも操作してくる。
どこだ。
どこにいるんだっ!
出てこいっ……!
と、本棚の下あたりにゴキジェットを噴霧した。
燻り出し作戦だ。
すると、すぐに、のたうち回ったヤツが出てきた。
ひっくり返ったので、勝利目前。
あらためて、とどめの一撃を噴霧し勝利を収めた。
それにしても、本当にショック。
あのデカさと黒さは、クロゴキブリ。
外から入ってきた系のビジターだ。
よくよく網戸を観察すると、ちゃんと閉めてても、ヤツが入ってこれるくらいの隙間はある。
網戸してても無駄。
ベランダにゴキキャップも配備してるけど、それもビジターの前には効かなかった。
来るときは来る。
強いていうなら、ヤツが出る数時間前、出現ポイントが臭かった。
ゴミ箱の中の生ゴミが腐って強烈な臭さを放っていたのだ。
あまりにも臭いので、ゴミ捨てて、綺麗にしておいたのだが……おそらく、その腐臭につられて入ってきたのだと私は勝手に予想している。
今回の出来事で得た教訓はふたつある。
- ゴミ箱とかは清潔に(寄ってくる)
- すぐに取り出せるところにゴキジェットを
なんなら消火器の横にゴキジェットを置くくらいの意気込みで。
備えあれば憂いなし。