きのう、ひさしぶりに銭湯に行った。
コロナ後、初。
というか1年以上ぶりかも知れない。
とにかく久々。
行く前には緊張した。
どんな状況になっているのかと。
しかし、いざ着いてみたら、いつも通りだった。
いや、いつもと違うのは、話している人が少ないこと。
「ほぼ話していない」くらいの割合だ。
当然であるが。
ほどなくして、私が心の中で密かに「主 (ぬし)」と呼んでいる常連中の常連のオヤジが「ウィース」と登場。
銭湯内を一瞥 (いちべつ)しながら、ズン、ズン……とサウナへ消えた。
さすがは主、非常に堂々とした振る舞いであり、その存在感は、まさしく男湯のボス。
やがて「ウィー」なんて言いながらメインフロアへ戻ってきた主は、さっそく華麗な「主ムーブ (ぬしむーぶ)」を次々とキメてきた。
大浴場に浮いてる髪の毛を風呂桶ですくって、シャーっと捨てる。
もしくは、風呂桶でお湯をすくい、床にある泡を流し落とす。
あるいは、風呂桶でお湯をすくい、大浴場の「へり」をササっと流す……。
このあたりの「みんなのため、あるいはこの銭湯のためのムーブ」を、さりげなくこなすのが「主」であり、主たる所以 (ゆえん )なのだ。
それを見た私は「さすがは主。今宵もビシバシとキメていやがる……」と感心していたのだが、突如、主は、これまで見たことのないムーブを披露したのである。
入り口に戻る主。
すわ、脱衣所に行くのかな……と思わせておいて、ガラガラと扉を一度開き、メインフロアに戻って行く……。
その後、自動的にスーーーーーー……と、ゆっくり閉まる扉。
北斗の拳の「お前はもう死んでいる」みたいな感じで、扉が閉まり切る前に主はもう、水湯に浸かったり、お湯に浸かったり、普通に銭湯を楽しんでいる。
最初、何をしているのかわからなかった。
しかし、その謎ムーブが一定時間おきに何度か繰り返されていくうちに、私はハッと理解した。
換気しているのだ! と。
これまで何種類もの主ムーブを見てきたが、いままで「換気」は見なかった。
主は、みんなのため、この銭湯のため、そしてこの時間を守るために、少しでもコロナ感染のリスクを減らそうと、一定時間おきに「換気」をしていたのである。 (たぶん)
こんなこと、なかなかできるものではない。
さすがは常連、さすがは主。
コロナ後に誕生した新しい主ムーブ。
withコロナ時代の「常連のふるまい」。
ぶっちゃけ、あまり効果はないかもしれない。
ほとんど意味はないかもしれない。
しかし、「みんなのため、あるいはこの銭湯のための行動」を、さりげなくこなすのが「主」であり、主が主たる所以なのだ。
みんなのためにをさりげなく。
主から学ぶことは多い。