一時期の大仁田厚的な体型 (74kg)の頃と比べると、10kg以上もスリムになった。
走ってもドスドスしなくなり、
腹もあんまり減らなくなり、
パツパツだったズボンはスルスルになり、
そして。
いつぞやかの誕生日、同僚である佐藤さんが私にプレゼントをくれた。
こういうのを忘れない粋な男、それが佐藤。
封を開けるとパンツだった。
それも、かなり良さげな、高級そうなパンツである。
サイズを見るとSだった。
その当時の私はMだったので余裕かと思いきや、SはSでも「タイトめなS」で、いざ履いてみると若干のパツ。
しかし、日常生活に支障はないパツり具合だったので、むしろ締め付けを楽しんでいた。
しかし月日が流れ、私はいよいよLになった。
74kgのLになった。
なんならLではなくD (デブ)の部類に入るかも。
だって体組成計アプリの数値的には思い切り「肥満」に入っちゃってるし。
こうなるともう、佐藤のパンツ (S)は危険な衣装。
あまりにもパツパツすぎて、さらに腹もぷっくら出ていたので、デフォで「とにかく明るい安村」みたいになってしまう。
ヤバイヨヤバイヨ!
安心できない!
もう履けない‼︎
押入れの奥へ……。
ーー事実上の戦力外通告である。
それから何年経っただろう。
一年くらいかも知れないが、こうして私はLからMへ、いいや、 Mを通り越してSになった。
押入れのパンツ入れに手を突っ込み、盲牌ならぬ盲パンすると、明らかに「GU」のパンツとは違う感触のパンツに指が触れた。
つまんでズルズル引き出すと、それは佐藤のパンツ (S)だった。
「今こそ……!」
まるでウン十年ぶりに仮面ライダーに変身しようとする藤岡 弘みたいなセリフだが、感覚的にはそれに近い。
ただ一つ違うのは、変身する時の掛け声が「変チン!」なだけである。
パンツを脱いで、佐藤パンツ (S)に脚を通した。
どこにも引っ掛からずスルスルスル……と上昇していく佐藤パン。
それはまるで、上級者がプレイする電流イライラ棒、もしくは満場一致の高得点を叩き出した「欽ちゃんの仮装大賞」の得点パネルのような勢いだ。
そしてサトパンはハトちゃんのチンペイをハイドして、腰のゴムも食い込む事なく、まさしくジャストなフィット感!
しかもシルクのような肌触り‼︎
「こういう感じだったのかァ〜!」
あまりの感動に私がその場で雄叫 (おたけ)ぶと、パンツも誇らしげな顔してこう言った。
「やっとオレの時代が来たな」。
9枚のGUパンツ (S)でチームを組んでいた羽鳥軍に、新たな選手が加わった。
四番、ファースト、パンツ佐藤。