真ん中席なのだから、通路側の人に「エクスキューズミー」と言えばトイレに行ける。
しかし、なぜかこの飛行機、ずっと機内「寝るモード」になっていたのだ。
まだ昼間なのに窓は閉められ、真っ暗で、最低限のあかりで。
モニタとかもないから、ほんと真っ暗で。
こうなると人間、昼間でも寝ざるを得ない。
私も寝てた。
しかし、のこり2時間くらいかな……というタイミングで尿意が発動。
となりの子はスヤスヤと寝ている。
起こすわけにはいかない。
絶対に起こすわけにはいかない。
精神統一して尿意から意識を遠ざける。
頭の中は「尿、尿、尿」だが、その「尿」を忘れることに全力投球。
もはや「尿」というより、ほぼ「禅 」。
しかし悟りを開いたら漏らしてしまいそうなので、緊張感は維持していなければならない。
くそッ、トイレはすぐそこ、斜め後ろにあるのに……。
しかし着陸30分前くらいになると、パッと機内にあかりがついた。
隣の子も同時に起きた。
そのタイミングを見逃さず、私は手を「どもども」とやりながらエクスキューズミーで無事トイレに。
この旅最初の難関を乗り越えた。
それと同時に悟りも開いた気がする。
真ん中の私がこんなんなんだから、窓側の彼はどうするのか。
横を見ると、イヤホンをしながら目を閉じている。
それはまるで高僧のごとく。
深い瞑想状態に入っているようにも見えるが、もしかしたら、彼も我慢しているのかも?
とても心配だが、「2席ぶんのエクスキューズミー」は大仕事。
私のような小心者は、最後の最後まで我慢してしまうかもしれない。