心から尊敬するベテラン中年ライターとの会話。
「今の若い者には言えないけどさ」から始まった。
言ったら老害扱い確定だから。
でもさ。
今の世の中、今の時代、ライターにとって、こんなに恵まれている環境ないぞと。
単価はピンキリかもしれないけれど、書くところなんて腐るほどある。
なんなら自分で作ることだってできる。
その可能性は無限大。
昔はページの取り合いだった。
どうしてもページが欲しい私は、強いネタを、強いネタを……とエスカレートし、最終的には「ゴキブリを食べてみた」というネタ出しをしてページを勝ち取るプロ根性を見せていた。
そのくらいのガッツと覚悟でこの仕事に向かっていた。
目の前で酒を飲むベテラン中年ライターも、さんざんライティングの仕事で苦労してきたひとり。
そんな彼が「ウン、ガッツ、わかるよ」と言う。
「俺が若い頃なんて、本当に金がなかったけど、風俗には行ってたから。あと何記事書けば風俗に行ける、って。そーゆーガッツでやってきた」。
私はゴキブリを食べて仕事をもらい。
彼は風俗のためにオーバーワークな仕事をこなし。
どんだけヨゴレなんだよ、と思いつつ。
お互い苦労してきたから、低学歴のバカだけど、こうして生き残れているのかもね、なんて。
目の前の彼は、まさに ”遠い目” をしながらビールを飲み、
「ま、若い子たちには言えないけどサ」
と言って笑った。