ビルの窓を拭いている職人さんを見ると、つらい昔のことを思い出す。
ついに漫画家一本で食えなくなり、さまざまな職を探していた時のことを。
いろいろある。
バイク便とか、ルート配送とか。
でも、最も「あと少しで面接の電話をしていた」というところまで考えていたのは、ビルの窓拭き清掃員である。
※調理師じゃないのかよ!
とにかく、お金が必要だった。
多少の危険をおかしてでも、お金が必要だった。
実は私は軽い高所恐怖症なのだが、そんなことは言ってられないくらい生活に困っていた。
求人広告を見るとお金は良さそう。
高卒の私でも受け入れてくれそう。
覚悟を決めて。
死ぬ気でやるか……と門を叩こうとしたのが、上記の通りビルの窓拭き清掃員だったのである。
もうひとつある。
これはさまざまな免許が必要なので、会社に入って修行を積んで……が必要だけど、「高所クレーンの操縦士」にも憧れていた。
なぜ高所恐怖症の私が、よりによって高所の仕事ばかりを志すのか意味不明だが、それだけ高所の仕事は稼げる (20年前の当時は)と結論づけたのであろう。
でもまあ、本当に「死ぬ気」だったのだろうなぁ……。
死にたいわけではなく、私の中で「漫画家をやめる=死ぬ」なので、死ぬ覚悟で再スタートを切りたかったのだと思われる。
ちなみに結局、そんな「ガテン」を読む毎日を送っている私を神様は哀れに思ったのか、新規の漫画仕事がチラホラと入ってきた。
しかし「食えるレベル」ではないので、まだ他にも仕事をする必要があったが、漫画の仕事も続けててOKなうえ、時間にも融通がきく「知人の会社」にバイトとしてお世話になることになった。
それが、AVのモザイク入れの仕事である。
時給は1000円だけど助かった。
ギリッギリ、メシが食えるようになれた。
本当にお世話になりました。
また、そんな「漫画家&モザイク師バイト」の日々を2年ほど送っていたら、突然ロケットニュースからお声がかかり、合流することに。
そしていまに至る。
もしもあの時、神様が漫画の仕事を与えてくれなかったら、私は「高所」の門を叩いていだろう。
もしもモザイク仕事のバイトをするほど極度の貧乏生活を2年も続けていなかったら、ロケットニュースからお声もかからなかったと思う。
生きるか死ぬかギリギリの状態を飛行し続けてたから、逆に目立って拾われた。
本当、私に声をかけてくれた人、そして受け入れてくれたロケットニュースには感謝しかない。
つくづく、人生ってわからないものだ。