不思議なこともあるもんだ。
ギスギスしたことが多い昨今のSNSだけど、良いこともあるもんだ。
私、インスタに動画をアップするのが好きで。
簡単に編集して、曲を選んでアップするのが好きで。
この動画にはこの曲を。
この時の気持ちはこんなんだったからこの曲を。
まるでDJみたいに、頭の中にあった曲をチョイスする。
タイミングもバッチリ合わせる。
それが楽しい。実に楽しい。
それが私のインスタの楽しみ方でもある。
話は変わってつい先日。
ポールダンスの練習動画を公開した。
たしか日付は8月10日。
この日も「810(はと)」で大切な日なのだけれど、私はある男のことを思い出していた。
その名をヨシローと言い、遠い昔、私の親友だった。
学校こそ違えど、同じような趣味を持ち、同じような夢を持ち、彼の誕生日は8月8日だった。
私は8月7日生まれなのだが、どういうわけだか私の場合、“特に仲の良い友達の誕生日が8月8日” というパターンが実に多いのだ。
高校の時に仲の良かったクラスメイトもしかり。寿司職人の親友もしかり。そしてヨシローもしかり。なぜか皆8月8日。なんなんだろうこれは。
ともあれ誕生日が1日違いのヨシローとは、短い間だったけど深い体験を共にした。
私の働いていた蕎麦屋で一緒に働くことにもなったほど。
しかし彼は、突如としてこの世から去った。
事故だった。
たしかハタチにはなっていなかったと思う。
それはそれはショックだったし、同年代の友人が亡くなったのは初めてだったし、わりとすぐそこに「死」はあるものだとも感じた。
お葬式も終わり、あらためてヨシローの家に挨拶に行った。
何かヨシローの思い出となるモノ、つまり何らかの形見分けが欲しかったのだ。
しかし、少しばかり出遅れていたようで、もうヨシローの部屋に、彼の私物はほとんど残っていなかった。
ヨシローと同じ専門学校に通うクラスメイトたちのほうが、我々より一歩早く動いていたようだ。
くそ〜っ……と思いながら部屋の中に目をやった先に、いくつかの音楽CDがあった。
あ、これ、ヨシローがよく聴いていたCDだ。ジャケットでわかった。
形見分けとして、私はこれをいただくとしよう。
何枚かのCDを頂戴した。
その中の一枚が、Jam & Spoon(ジャムアンドスプーン)の『Tripomatic Fairytales 2001』なるアルバムだった。
名前こそ2001だが、リリースは1993年。
とても有名なアルバムのようで、なんと英語版のWikipediaがあるほど。
それによると、
「このアルバムには、「Right in the Night」、「Find Me」、「Angel」という 3 つの世界的ヒット シングルが収録されています。」
とのことで、ウン、まさにそう。
そうなのよ、まさに。
全ての曲が最高だけど、やはりその3曲は神曲なのだ。
ポールダンスの動画に当てこむ曲は、なんとなく「Find Me」にしようと思った。
クルクルまわる私の姿を見ながら、頭の中で「Find Me」が流れていたから。
また、8月8日に生まれた親友たちのことも思い出していたから。
ヨシローも含む不思議な縁「8.8」の皆を。
曲を当てはめるとジャストフィット。
我ながら満足のいく動画になった。
https://www.instagram.com/reel/C-e1H8jPo3Z/
そんなに「いいね」は押されていないけど、別にいい。
この動画は、ヨシローのことを思い出した記念の動画。
奇しくも2日前はヨシローの誕生日。
その前日は私の誕生日。
45歳になった。アラフィフになった。
もしもヨシローも生きていたら、45歳のアラフィフだ。
「ゴーちゃん、おれたちもうアラフィフだよ。やばくね?」
きっと彼なら、そんなことを笑いながら言っていただろう。
──数日後。
というか、昨日。
私のポールダンス動画に、「いいね」とコメントが書き込まていた。
英語での書き込みで、名前を見ると……Plavka……プラヴカ?
さらに「私の歌をシェアしてくれてありがとう」なんてことが書いてある。
マジかよ!
そう、プラヴカさんとは、まさにJam & Spoonの『Tripomatic Fairytales 2001』に参加したシンガーの1人であり、「Find Me」を歌った張本人。
こんなことがあるのか……と思った私は、プラヴカさんに英語でメッセージを書き残した。
あなたの歌声が好きであること。
25年以上も前に、この曲に出会ったこと。
私の親友から教えてもらったこと。
しかし彼は亡くなったこと。
彼からCDを譲り受けたこと。
彼の誕生日が8月だったこと。
あなたの歌声を聞くと、彼のことを思い出すこと。
プラヴカさんは丁寧に、「ありがとう。あなたの親友に、RIP」と返信をしてくれた。
そして、その翌日(というか今日)。
プラヴカさんのインスタをチェックしてみると、なんと彼女、おそらくアメリカのご自宅であろう場所から、あのアルバムの中のもう1つのヒット曲「Right in the Night」を生声で歌っているではないか。
https://www.instagram.com/reel/C-tbD21ygGd/
現在はDJとしても活躍するプラヴカさんが、生歌を披露している動画は、どうもけっこうレアなもよう。
単なる偶然なのか。
それとも、私の親友ヨシローのことを知ったうえで歌ってくれたのか、その真相はわからない。
ただ、ひさびさにプラヴカさんが往年のヒット曲「Right in the Night」を突如として歌ってくれたことは事実である。
こういう時は、良いように解釈したい。
おいヨシロー。
天国にいるヨシロー。
元気か。
お前の持ってたJam & Spoonのあのアルバムのあの曲を、お前のために本人様が歌ってくれたぞ。
しかも、お前にRIPって言ってくれてるぞ。
よかったな。
あとはHBD(ハッピーバースデー)to ヨシロー。
お前が生きていたら45。
おれも45。
おれたちアラフィフだぞ? やばくね?
ヨシローの夢は、ライターになることだった。
ヨシローはライターの専門学校に通っている最中に事故で亡くなった。
私はまだまだライターとして、漫画家として、編集者として、全力で、命懸けで表現し続けなければならない。
天国にいるヨシローに見てもらうためにも。
▼Find Me
▼ Right In The Night
|