
鍋の裏が好きだ。
少し汚れていたり。
キズが付いていたり。
コゲていたり。
しかし単に汚いだけでなく、“なるべく綺麗に扱おうとしている感” のある表面についた「こびりつき」とか、たまらない。
仕事してる感がある。
生活を感じる。
人生すら感じる。
哀愁。
貫禄。
人生。
特に好きなのが中華鍋。
鉄鍋。
リアルなキズ、リアルなハゲとヤケ。
とりわけ明確なる年季を感じる。
親父の背中のような。
中華鍋は薄く油を塗って保管せねばならない。
ゆえに、道具棚に入れる前にオイリングする。
テッカテカになる。
キラリと光るほどの光沢。
新品では絶対に出せない、年々増す、にぶい輝き。
それもまた人生のような。
顔のシワから感じる人生みたいな。
鍋って人間そのものなのではないか。
表面 (おもてめん)は外面 (そとづら)で。
裏面は内面。
テフロンは、あじけないな。
私は、鉄鍋でありたい。
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