
時計を見ると、あと10分。
「もうほとんど時間がない」。
普通なら、そう思って諦めてしまうような時間。
でも、私は違う。
猛烈な勢いで、巻きに巻く。
この「たった10分」の中で、一体どこまでできるのか。
毎日、自分とそんな勝負をしている。
特に、朝。
朝の10分は、まさに戦場。
1分1秒が勝敗を分ける。
なぜ、私があと10分を「まだこんなにある」と思うようになったのか。
理由はひとつ。
キックボクシングだ。
キックをやっている人間ならわかるはず。
3分1ラウンドが、どれほどめちゃくちゃに長いか。
普段わたしが練習する時は2分1ラウンドでやっているが、プロの試合なら3分3ラウンドが基本。
1試合は合計9分。
それはもう、アマチュアの私からしたら途方も無く長い時間。
合計9分も動き続けるなんて死ぬのでは無いかと思うほどに。
なんなら、私の場合、ふだんの練習「2分1ラウンド」ですら短くは感じない。
しっかり練習したら長く感じる。
追い込まれている時なんて永遠に感じる。
ちなみに、アマチュアの試合は1分半が2ラウンド。
1試合の合計、たったの3分。
プロの1ラウンドと同じ。
だが、これが……死ぬほど疲れる。
つまり。
たった3分でも、死ぬほど「やること」はある。
死ぬほど「できること」はある。
それが、その3倍以上の「10分」あるとすれば?
可能性は無限大。
できることは山ほどあり、その高さは富士山のごとく。
弁当作りだって、洗濯だって、掃除だって、メール返信だって、パッキングだって。
倍速で動けば2倍できる。
4倍速で動けば4倍こなせる。
逆に、何もしなかったら、何も起こらず時間だけが過ぎていく。
私は絶対にそれをしない。
だから「常に動いている」ように見えるのだ。
キックの時は、リングで相手と戦っている。
あるいは、自分自身と戦っている。
でも日常において、私は「時間」と戦っている。
10分という名の家事のリングで、私は今朝も戦い続ける。
