
つい先日、3時間ほどの停電があった。
とはいえ、突然ではない。
かなり前から知らされていた、電気工事による “計画停電” である。
うちのマンションだけ、真夜中に約3時間。
予定はカレンダーにも入れていたし、把握もしていた。
……のだが、普通に忘れていた。
そして夜中、ふと目が覚めたとき。
「なんか変だぞ」
何が起きているのか分からないが、なんか様子がおかしい。
とりあえず冷蔵庫を開けてみると──真っ黒。
「あ、これ停電だ」
そう理解した瞬間、いつもの空気でないことに気づく。
音が一切ない。
シーン……と音が聞こえるほどの静寂。
マンション中のすべてが止まっているのだから当然だ。
そのとき思った。
「私は、ふだん、なんてやかましい家に住んでいるんだ」
それは今、これを書いている最中も思っている。
とにかく音が多い。
空気清浄機の音。
最近動かし始めた除湿機の音。
耳を澄ませば、シーリングファンが回る音もする気がする。
朝になればペットである愛亀「モトラ」がゴソゴソ動き出す。
しかも電気とは関係なく、目の前が大きな道路なので車の音もすごい。
だが──
私は、やかましくないと落ち着かない。
あまりにも静かだと、逆に恐ろしくなってしまうのだ。
なぜそうなったのか。理由はシンプル。
私が生まれ育った家は、中目黒駅から徒歩30秒の場所にあった “羽鳥ビル”。
そして、珍しいことに両隣がパチンコ屋。
つまり、「騒音の極み」や「ギラギラの光」が左右からステレオで来る環境だったのだ。
そんな家で成長期を過ごせば、そりゃ静かだったり暗かったりしたら落ち着かなくもなる。
というわけで、計画停電は正直、精神的にちょっとキツかった。
たった3時間とはいえ、私には “この世の終わり” にすら感じられた。
我が家は、電気でできている。
そして我が家は、喧騒の中にある。
パチンコ屋に挟まれているかのごとく。
三つ子の魂、百まで。
