正月に女装をするようになってから数年経つけど、いつもヅラを脱ぐ時は、なんとも複雑な気持ちになる。
脱いだら終わる。
正直、寂しい。
祭りが終わるような感覚だ。
でもいつまでも女装しているわけにもいかない。
6つも福袋を買ってファッションショーをしたということは、最低でも6つの福袋記事を書かなきゃならないということ。
しかも、ケツは決まってる。
ほぼ24時間以内に6本。
だからチンタラしてるヒマはない。
さらに言うなら、長時間の女装は体にも良くない。
カラコン入れてるから目にも良くないし、ヅラがムレて頭皮にも良くない。
メイクも肌に良いわけない。
つまるところ、何かしらの健康的リスクを冒しながら女装をしているのだ。
朝はやくからメイクして、昼前からひとり黙々とファッションショー。
1ミリでも可愛らしく写ろうと、全力で自撮りし続けること6時間。
我ながらパワーの注ぎ方は尋常ではない。
きっと、この時は、輝いている。
あまりの熱量に光を放っている気さえする。
まるで寿命を終えようとする星の最後みたいに。
撮影後。
今年もなかなかヅラを脱げなかった。
名残惜しくて脱げなかった。
でも、1秒、1秒と時が経つにつれ、頭皮や瞳や肌や体に蓄積されるダメージのことを考えると……!
なんともやりきれない気持ちになる。
終わりを決意してヅラを脱ぐと、鏡の向こうには、化粧したオッサン(40)が映っていた。
あまりの落差に泣いちゃいそうだが、それを断ち切るように、
「よしっ、片付けるか!」
とつぶやいた。
あえて男らしくつぶやいた。
気持ちのギアを切り替えるように。