このまえ、山口に取材に行った。
いろんなところに行ったけど、「阿川」と言う駅で、ふと考えてしまう時間があった。
とてつもなく田舎な場所に、とてつもなくカッコいいカフェがあった。
田舎の場所というか、田舎の駅に。
駅そのものがカフェだった。
その地に住むダンサーは、そこで一杯飲んで、数時間に一本しか来ない電車でゴトゴトと家に帰るそうだ。
話を聞くだけで、なんともジブリ。
そんな映画みたいな時間を普通に過ごしているなんて……とカルチャーショックを受けてしまった。
都会生まれ、都会育ちの私は、田舎という田舎が苦手だった。
嫌とかではなく、怖いのだ。
ビルとか人が見えないと落ち着かないのだ。
なにせ家の両隣をパチンコ屋に挟まれて、ビカビカのなか育ったのだ。
田舎が怖くて仕方あるまい。
でも、このまえ、阿川にて。
素直に「いいな」と思った。
心底、羨ましく思った。
「幸せとは何か」なんて考えたり。
「人間らしく生きるとは何だろう」なんて考えちゃったりもした。
昨年、湯河原の真鶴の方に行った時も「いいな」と思った。
海が見えて。
なんて素敵な場所なんだろうって。
歳をとるにつれ、田舎への憧れみたいなのが生まれてきてる気がする。
いつか田舎に住みたいな、なんて。
畑でも耕したいな、なんて。
そんなことを、このまえ、阿川で考えた。
無人の駅で、考えた。