移動、移動、とにかく移動。
電車に乗ってバスに乗って。
そして最後は徒歩で数キロ。
なんで辺鄙 (へんぴ)な場所にホテルをとっちまったんだ……と思いながらテクテクと歩く。
しかしスマホ (Googleマップ)は本当に便利。
旅の革命といっても過言ではない。
Google様に従って歩けば、ルートはもちろん、残りの距離まで表示されるのだから。
そして……あと400メートル!
そんな時、今回のイベントが発生した。
バイクに乗ったおじさんが話しかけてきた。
「どこに行くんだ?」
「ホニャララホテルだよ」
「それは近い。乗せていくよ。さあ乗りな!」
──迷った。
ついさっきまで雨が降っていたためシートが濡れていた=ここに座ればケツが思い切り濡れる……という迷いもあったが、“なにかたくらんでいるのでは?” という迷い。
目的地に着いて「ハイ、お金」のパターンもある。
違う場所に連れて行かれるパターンもある。
しかしながら、単に本当の親切である可能性もある。
迷う。
が、0.5秒ほど迷った末、私は「いや、歩いていくよ。ありがとうね」と言い断った。
なぜなら、のこり400メートル歩けばもう着くのだ。
これが2キロとかだったら、かなり迷っただろうが、のこり400メートルなら歩いて行った方が無難。
おじさんは、「そうか! オッケー」と言い、走り去っていった。
去り際、悪い感じではなかったから、自然な断り方ができたと思うし、なんとなくだが、本当にいい人だった可能性が高い。
ごめんね、おじさん。
旅はこういうシーンの連続。
私は今、旅をしている。