肩書きの多い私には、「迷惑メール評論家」なんてものもある。
迷惑メールという名の魚を専門に扱う料理人だと思ってほしい。
最近あまり料理を披露することはないけれど、魚群は常に意識している。
時に戦い、大きな魚を逃したりもしつつ、常に海の様子をうかがっている。
調査のために、複数の「迷惑メール専門メールアカウント」も持っている。
その数あるメールアカウントの中のひとつ宛てに、ここ何年もの間、毎日欠かさず迷惑メールを送ってくれる業者 (個人?)がいた。
送信者名が違くとも、ドメインやメールの構造、メールの書き方などで同一人物の犯行か否かは手にとるようにわかる。
だって、こちらもプロだから。
ともかくそのメールアカウントは、いつの日からか、ほぼ、その業者の迷惑メールを受信する専用になっていた。
迷惑メール最盛期だった2014年〜2015年のころには1日1000通アタリマエの世界だったそのメールアカウントも、徐々に徐々にメールが減り、いよいよ残すは1社 (1人?)のみ、というところまで枯れていた。
そしてついにメールが届かなくなった。
最後に受信したのは1週間前。
いつも通りの、どーでもいい、クソのような迷惑メールだ。
しかしそれっきり、まったく迷惑メールを送ってこなくなったのだ。
どうしたのか。
なにがあったのか。
心配だ。
もしかしてコロナの影響?
詐欺に引っかかる人が年々減っていって、もしかして店じまいしたとか?
根性ねぇ〜なぁ〜。
送ってきなって。
まぁ、みんなに送ったらそれこそ迷惑だから、オレだけに送ってくれたらいいから。
全部オレが受け止めてあげるから。
ちゃんと心を込めた迷惑メール送ってきたら、オレも心を込めて返すから。
あきらめんなって。
プロならば。
残念ながら今もなお、そのメールアドレスに迷惑メールは届いていない。
かつてない静寂に包まれている。
それはまるで、昔は人が大挙してやってきた繁華街が完全なるシャッター商店街になったがごとく。