すこし前。
昼間っからプロジェクターで海外ドラマでも鑑賞しようとカーテンを閉めた。
すると、カーテンの隙間から木漏れ日が差し込んだ。
ベランダの葉っぱや、鉄骨などが絶妙に折り重なり、まるで庭に竹やぶがあるようだった。
しばし眺めていると、ますますカーテンの向こうに竹やぶがあるような感覚におちいった。
それも純和風な竹やぶであり、まるで我が家が千利休の茶室になったかのよう。
ソヨソヨしており「カサカサ」という音が聞こえてきそうな動きのある影。
実に風流。
雅 (みやび)な影。
この光の角度。
光の強さ。
風の強さ。
そしてカーテンの隙間具合。
すべてが合致していないと、この「竹やぶ」は現れない。
それが起きるのは、太陽の位置的には一年後。
しかし風やカーテンが再現できるとは思えない。
それゆえ、この竹やぶは、この日だけの竹やぶ。
そんなことを考えているうちに、壁に映る幻の竹やぶは消えていった。