もうかれこれ10日ほど前から本調子ではなく。
最初は喉の痛み。
あとは鼻水、少しの咳、だるさなど。
熱はない。
風邪かなと思い耳鼻科に行った。
副鼻腔炎と咽喉頭炎との診断。
お薬をたくさん処方してもらい飲み続けた。
──数日後。
喉の痛みは治るも、鼻水、鼻詰まり、だるさに加えて咳まで出るようになってしまった。
相変わらず熱はないが、「もしや」と思い、密かにコロナの抗原検査をしてみたり。
結果は陰性。
よかった……が、ならば、この症状は何なのか。
──数日後。
咳に加えて痰がからむようになったので、今度は内科に行ってみた。
セカンドオピニオン的な意味もあり。
結果、ものすごく良い先生で。
喉も綺麗になってると。
耳鼻科で処方されたお薬で問題ないから、飲み続けて、もう少し様子を見てみては? と。
だるさをとる漢方薬など、少し追加でお薬を処方してもらう。
そして数日経ったが、どうにもこうにもスカッと治らない。
徐々に回復には向かっているのだが、「治りました!」って感じには程遠い。
ここで、私は「もしや」となった。
今まで誰にも言ってこなかったが、実は私、もう1ヶ月以上、ずっと血便が出続けているのである。
ドス黒い血便ではなく、鮮やかな赤。
明るい赤とでも言おうか。
CMYKならM (マゼンタ)な赤。
排便が終わると便器の中は真っ赤になっていた。
変な話、便器で「バン!」と勢いある屁をこくと、赤いスプレーをワンプッシュしたような感じにまでなる。
そんな血の惨状に最初は本当にビックリしたのだが、「鮮やかな血なら痔の可能性が高いので大丈夫」との情報を得ていたので、「そのうち治るだろう」と、のんきに様子を伺っていた。
しかし、一週間経っても治まらず。
ふいに治ったと思ったら、翌日にはまた赤い毒霧復活で。
たまに素顔になるけれど、すぐにザ・グレート・ムタになってしまう肛門のような感じで。
そうこうしているうちに、血便生活1ヶ月突破。
もしかして体調悪い原因はコレなのでは? と。
ひょっとして私が想像しているより悪い病気だったりするのかも、と。
ネットで「血便」を調べると、怖いこともたくさん書いてあるし……。
──なので本日、肛門科に行ってきた。
先生は、まさに「肛門のベテラン」みたいなオーラのあるオジサマだった。
まずは先生に、血便初日に撮っておいた写真を見せた。
また、「人間ドックの結果は問題なかった」などの情報も伝えた。
「ま、とりあえず見てみましょう」
先生に促され、私は狭いベッドの上に仰向けに寝転び、ズボンを完全に下げ、なおかつ肛門を曝け出すように足を抱えた。
さらに、自ら尻をムンズとつかみ、「肛門がよく見えるよう左右に広げよ」との指示。
その通りにする。
なんという恥ずかしさ。
こんな屈辱的なポーズを取ったのは人生初である。
先生は私の肛門をまじまじと見て、
「あー、なるほど」
と言った。
何がなるほどなのかよくわからないが、その勢いで先生は
「じゃー、指入れるからね」
と。
えっ!
……と思ったらグリグリグリグリ。
「アヒィ!」
声にならない声が漏れる。
「ヒィィ!」
楳図かずおの漫画みたいな叫びを上げる私。
それに対し、先生は
「う〜ん、キツイ! これはキツイ!」
と連呼している。
キツイのは私の方なのだが、先生は「キツイね、キツいよ〜!」とグリグリしながらフムフムしており、対する私はヒィヒィ悶えている。
状況的に完全にキツイ。
だが、先生が言う「キツイ」は私の思うキツイではなく、文字通り私の肛門がキツかったらしい。
おっさんの肛門を見ることなんて誰のであろうとキツイと思うが、そうではなく、狭いと。
「ほら見て、血が出てる」
と先生は血のついた指を私に見せる。
そしておもむろにこう言った。
「きみの肛門は、締まりが良すぎる。だから血が出る。説明しましょう」
なんでも、人間の肛門は2段階の門みたいなのがあるらしく、いわゆる「意識して閉められる肛門」が外の肛門。
それに対し、無意識的に開けたり閉めたりする肛門が、肛門内の奥にあるらしい。
その肛門内にある第二の肛門と言うべきセカンド肛門の「締まりが良すぎる」らしいのである。
この歳になって「締まりが良すぎる」と言われるのもなんだかテレるが、とにかく締まりが良すぎる結果、太くてカタいウンコが通過する時、切れてしまうのだと。
「手術しないと治らないだろうね」
先生いわく、私くらい締まりの良い肛門で、一度こうなってしまうと、もう「肛門を広げる手術」をしないと血便からは脱せないという。
具体的には、「指2本入るくらいまで広げないと治らない」という。
今の私の肛門は、指1本すらマトモに入らない鎖国状態。
便のたびに、血で血を洗う戦国時代。
それを手術で開国しなければ、文明開花は始まらないのだという……。
──ということで、急だが、手術することになった。
今月中に。
もう採血も済ませ、手術日も決まった。
その日まで、1日2回、カンチョーみたいな軟膏を肛門に入れなければならないのだが、それも入るかどうかわからないので、「無理しなくて良いよ」と言われている。
それにしても、なぜ私は突然こうなってしまったのか。
一体なぜ「ケツの穴の小さい男」になってしまったのか。
原因がわからないだけに、非常に悔しい。
でも、キッチリと手術をして、ケツの穴のデカい男になって帰ってきたい。
「指2本入るくらいデカくしてしまったら、逆に漏れたりしないのだろうか……」
そんな心配をしてしまうのも、まだまだ私が「ケツの穴の小さい男」だからなのであろう。
心は大きく。
ケツの穴も大きく。
なお今回の肛門科、冒頭に書いた体調不良の件に対しては、何の解決にもなっていない。
しかし徐々に回復には向かっている感があるので、お薬を飲みつつ様子を見ていきたい。
みなさまも夏風邪にはお気をつけて。
※↓続編